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Flat Panel TV and Display World + Solar Power beyond

薄型テレビと関連する液晶・有機EL・プラズマ技術、業界企業そして市場トレンド情報を掲載していきます。 このブログで激しい市場の動きに追随できます。---- Since Nov.2004

☆有機EL時代を紐解く

19 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (8)

(7より続く)
 
有機ELの素材分野では,日本メーカーが競って研究開発・供給体制を整えています。ただ無視できないのは多くの基本特許を持っている海外企業の動向なのです。
アメリカのUDC(Universal Display Corporation)は,新日鉄化学,出光興産やソニー,サムソンSDIなどにも技術を提供している有機ELの開発ベンチャー企業。
研究で密接な関係にあるプリンストン大学に近いニュージャージー州ユーイングの本社には研究者が終結しています。
特に強みを持つのが発光材料の「リン光」タイプ。現在主流の「蛍光」タイプの発光材料に比べて発光効率は4倍。
次の本命として各社が開発を急ぐ中,UDCの技術は欠かせないと見ています。
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発光材料は発光するドーパントと発光を助ける「ホスト」の組み合わせが基本。新日鉄化学の下浦康弘有機EL開発部長は「UDCはリン光のドーパントでは多くの特許を持つ。当社はホストの開発を分担し優れた材料を開発したい」と話します。
UDCは有機EL関連の特許を,申請中を含め約800件保有。普段は透明で画像を映す際は表裏両側から見える{TOLED」,薄くて折り曲げが可能な「FOLED」技術も持つのです。
まだ利益を安定して出せる体質ではないが,「リン光技術の商用利用は飛躍的に伸びている」とシドニー・ローゼンブラットCFOは話しています。
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 そしてとても興味深い訪問レポートがGIZMODに載っていました。”Exclusive: The Secret Sauce That Goes Into an OLED High Def TV”と銘打ってUDCの会社そして実験室を訪問した記事が掲載されているのです。比較的簡単な英語でユーモア溢れていますので有機ELの勉強に是非読んでみてください。




「一体となって開発を加速しましょう」「勿論です」。10月初旬,英国を代表する名門大学に近いケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー(CDT)を訪ねた住友化学の米倉弘昌社長に,デビッド・ファイフCEOらが応じた。
住友化学は9月,この分野での有力ベンチャーであるCDTを完全子会社化。2008年度中の事業化を目指している素材事業で,研究開発を加速させる切り札にしようとしているのです。
CDTはケンブリッジ大学カベンディシュ研究所の研究者が設立。分子量が多くパネルの大型化に向く「高分子」タイプの発光材料・デバイスの研究では世界の先頭を走っているとされています。凸版印刷やセイコーエプソンなどとも協力,業界全体の有機EL開発に貢献してきました。
住友化学は01年から一部出資などでCDTと関係を築いてきた。一気に取り込んだことで「高分子の技術開発のリーダー企業の地位を確立できる」と米倉社長は強調。CDTとの他社との共同開発も継続するとしています。
日本の各社は基礎的な考え方を含め有力特許を押さえるUDCやCDTなどと連携。自社の分子設計や精密合成,量産のノウハウをつぎ込んで事業化につなげることを目指しています。
このほか有機ELの先駆者であるイーストマン・コダックが特許をすでに1800以上保有し,さらに数千件を申請中。デバイス・材料開発で無視できない存在であるほか,化学大手のデュポンも高分子系材料を使用した有機ELディスプレイの大量生産方式の開発に取組んでいます。
「(商業化の)最終段階」(デュポン)にあり,実用化できればまずは携帯電話向けディスプレイ,最終的にはテレビ市場への参入を目指す。次世代薄型ディスプレイの開発競争は,化学業界を巻き込んでさらに続きそうです。


[とりあえず今回の特集,完: 随時新情報をUPしていきます]

15 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (7)

有機EL時代の到来か? その流れを追う (6) より続く)

高分子は寿命や品質の不安定さが課題とされているのですが,米倉社長は「材料の性能は低分子レベルに達した」と反論していますね。
2008年度からデジタルカメラのディスプレイなどで事業化し,10年度には本丸の大型テレビ向けで実用化を目指すと言っています。
材料市場で「低分子対高分子」の構図が浮上する一方で,発光のタイプで分類する「蛍光対リン光」も開発競争も焦点となっています。
現在主流の材料は「低分子・蛍光」ですが,材料大手の新日鐵化学の下浦康弘有機EL事業開発部長は「次世代材料の本命は”低分子・リン光”と断言しています。
有機ELが発光するのは,電気的エネルギーを与えられた発光材料が一時的に活性した「励起状態」になり,元の「基底状態」に戻る時に生じるエネルギーが光になるためです。
このときに,蛍光はエネルギーの25%しか発光に使っていないのですが,リン光は100%使います。
発光効率が4倍に高まり,テレビなどの省エネ化に直結。問題はリン光発光をする物質が蛍光に比べて少ない点です。
色の三原色のうち,特に青色材料はまだ不完全なのです。
新日鐵化学はリン光発光で04年には赤色,06年に緑色の開発に成功していて「残る青色は今年度中に開発する。」(下浦部長)とし,材料市場で一挙に主導権を握る構えでいます。
「低分子・蛍光」でリードする出光興産も,06年からリン光発光の青色材料の開発競争に本格参入しています。
「将来は蛍光と同様,リン光でも三原色をそろえる」(電子材料部)ことで最大手の座を死守すると断言。
三菱化学は高分子の専売特許とされた「塗布」による成膜技術を,低分子で実用化する研究に取組んでいて,10年にも事業化する計画です。
高分子?低分子,蛍光?リン光とも,現段階では一長一短があります。ですが開発競争が加速して画期的な材料が出現すれば,有機EL製品に革命をもたらします。そのときには材料メーカーの勢力図が一変しているかもしれないですね。

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (8)(続く)




11 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (6)

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (6)より続く

「われわれの新しい材料を使った有機ELテレビです」。先月11月27日都内の定例記者会見の席上,住友化学の米倉弘昌社長はカシオ計算機が作った6インチのフルカラーテレビの試作機を一台展示して自慢したそうですね。
パネルの厚さはわずか2mm弱。超薄型の有機ELテレビはソニーが11インチを商品化して店頭に並べていますが,この試作機に確かに世界の有機EL関係者が注目しています。
厚さなどではなく,「高分子」タイプという次世代の有機EL材料を使っているところに注目が集まっているのです。
現在普及している有機ELの材料は,分子量が数千未満の「低分子」タイプです。分子量が少ない分,純度を高めて品質が安定しやすいのが特徴なのですが,低分子材料でパネルなどを製造する場合,真空中で材料を加熱・気化して基板上に成膜する真空蒸着が基本で,大画面に均一に蒸着するのが難しくパネルの大型化に限界があると考えられているのです。発光層や輸送層などを積層するのに手間もかかります。
つまり現在の小型中心のパネルにはそれなりの価格で製造できるとしても,大型を見据えた場合加速度的に技術難度や低価格化のハードルが上がってしまうのですね。

 一方分子量が一万を越す「高分子」は,一つの材料に発光や輸送などの複数の機能を盛り込んで一層にもできるのです。
さらに材料を溶剤に溶かしてインクジェットで基板に塗布することも可能。(但しインクジェットが本当に安上がりかどうかはまだ液晶でも議論がありますが..凸版印刷がリソグラフィ法でシャープ10G対応
もし安定的な工程が確立できたならば大画面に効率よく塗布できます。テレビの大型化や液晶などに比べて割高な製造コストの低減には高分子が有望とされる理由がここにあります。


(7へ続く




6 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (5)

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (4)より続く

発光材料で赤色を得意とするのが東洋インキ製造,東レ,三井化学など。得意な色を補完する動きもあり,三井化学と出光は06年に材料事業で協業を開始した。発光材料は発光物質の「ドーパント」と発光を助ける「ホスト」を組み合わせるが,三井化学は寿命16万時間の赤色ドーパントを開発,有力な赤色ドーパントを持っていなかった出光に供給している。

「テレビや携帯電話の有機ELのメイン画面は,当社の材料を使わないとほとんど製品化できないのでは」。中堅化学の保土ヶ谷化学工業の尾原利夫執行役員が胸を張る製品は,プラスの電極からの電荷を発光層に運ぶ「正孔輸送材」だ。もともとは染色事業からコピー機などの感光材料に参入し,91年に有機ELの輸送材の開発をはじめた。電荷を運ぶ機能や高純度の物質を合成する生産技術など共通性があったからだ。
2001年からは郡山工場で専用釜を設置し量産体制を整えた。同じ輸送材料でもマイナス電極側の「電子輸送材」を開発中で来年にも事業化する。発光材料への参入も視野に入れている。


有機EL市場はパネルを含めて現状では市場規模は年間数百億円で,このうち「有機EL素材は数十億円程度を占める小規模な市場にすぎない」。しかし今や三兆円超とされる液晶向け材料市場も最初は小規模な市場にすぎなかった。
業界では発光材料で出光,新日鐵化学,東洋インキ,米イーストマンコダックの4社が世界シェアの7割を握るとされている。保土ヶ谷化学は正孔輸送材の世界シェアが金額ベースで四割という。


最適な物質の分子構造を分析・抽出し,目的の材料を高純度で量産する技術は日本の化学メーカーの得意分野の一つだ。緒戦を制した形の日本勢は,有機ELの材料市場が液晶材料と同じ成長路線をたどる機をうかがいさらなる技術革新に歩みはじめている。

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (6)へ続く 



6 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (4)

(有機EL時代の到来か? その流れを追う(3)より続く)

[8] 材料開発--出光興産

直径2メートル近い円筒形のかまに投入した科学薬品や溶剤,触媒などをゆっくりとかき混ぜ反応熱を制御しながら新しい物質が静かに合成されていく。
出光興産が静岡県御前崎市の遠州灘近くで四月に稼動した四階建ての工場には,こうしたかまを大小十以上設置されています。
製造するのは約30種類におよ有機EL材料。
様様な化学物質から目的の有機EL材料を合成するまで,多い時で20段階の反応を繰り返し完成まで平均で二ヶ月を要するとか。
合成した材料は真空中で摂氏数百度で加熱して気化させて精製。
出来上がるのは数十キログラムの紛体で「重量当りの単価は貴金属並み」とのこと。
有機ELテレビや照明は,電気を通すと自ら発光する「発光層」を,プラスとマイナスの電荷を効率よく発光層に移動させる二つの「輸送層」でサンドイッチ型にはさんでいるのが基本構造。
この「発光材料」や「輸送材」の量産で日本企業が世界を牽引しています。

「一日八時間の仕様で寿命は10年間」。ソニーの世界初の11型有機ELテレビを支える材料技術が,出光興産の「青色材料」です。鮮明なカラー画像を作り出すには,赤・緑・青の三原色の発光材料が必要ですが,特に電気を流した時のエネルギー変化が大きい青色材料の長寿命化がネックになっていました。
出光は1985年から多角経営の一環で研究に着手。製紙用などに使う蛍光材料が青色発光に適しているのを付きとめ世界で初めて実用化したのでした。

(有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う(5)に続く)


4 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う(3)

(有機EL時代の到来か? その流れを追う(2)から続く)

[7] 製造装置の開発競争

 有機ELパネル生産の要となる製造装置を巡る開発競争も激しさを増しています。国内最大手の有機EL製造装置メーカー・アルバックもパネル量産に向けた開発を急いでます。
有機ELの製造方法は真空内で発光する有機材料を気化し基板に膜を形成する真空蒸着が主流ですが,赤・青・緑の三原色を微細に塗り分けるのが困難なのが難点です。
三原色を塗り分ける方式の他に有機EL材料で白色を光らせてカラーフィルターで色を出す方法も検討していて,この方法でパネルを効率的に作る装置の開発も急いでいるようです。ただこの方法は表示面での性能を著しく損なってしまいますね。
またなんといっても高価な有機EL材料ですから,それを無駄なく使う供給方法の模索もとても重要で研究が続けられています。



大型の本命技術とされるインクジェット技術を使った製造装置も勿論研究中です。基板の上の必要な場所に必要なだけ確実に塗布できるという一見素人受けする利点があります。
ただインクジェット技術を使える材料開発にはまだまだ課題が残っています。このあたりは材料の開発と密接にからみますので,後で材料開発のところでまた検討して見たいです
ね。 (今の液晶カラーフィルターでもインクジェットが本当にコスト面で有利なのかどうか議論がありますね,シャープの第10世代堺コンピナート内に大日本はインクジェットを採用する工場を建てるのに対して凸版印刷はリソグラフィ方式で行きますね)
 
 有機ELは液晶やプラズマに置き換わる流れを作ることができるのか?技術的には優れていながら過去にビジネスとして成立しなかった数多くの技術のようにいずれ泡と消えてゆくのか?
もっと深くたどって行きましょう。

(続く)
 


有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う(4)に続く
1 Dec

有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う(2)

...有機EL時代の到来か? その流れを追う(1)より続く

[6] 中小型用途の戦い

「AUデザインプロジェクトの集大成」,KDDIの高橋誠取締役は,近々発売されるINFOBAR2をこう表現します。著名なデザイナーを起用した斬新なデザインが売り物です。
この機種のディスプレイに有機ELが採用されています。
「携帯電話も画質で選ばれる時代。今後も有機EL搭載の機種は増えていく」とAUは言います。
ソフトバンクも秋冬モデルで初めて有機ELパネル採用の機種が発売される予定。
AUとソフトバングが採用した有機ELディスプレイは実は全て韓国のサムソンSDI製。AU幹部は「コストも含めた総合力でサムソン製を採用した」と言っています。
そのサムソンSDIは天安市に約610億円の投資を行い有機EL工場を立ち上げました。「本格的な量産体制は世界初」と言います。日本メーカー以外のNokiaにも採用が決まったとも噂されています。
SDIでは主力のプラズマパネルが苦戦していて中小型の有機ELを強化。一方大型パネルも生産する予定で,グループ内でも有機ELを取り込む競争が激しさを増しています。



日本メーカーでもエプソンや東芝松下ディスプレイも携帯電話やPND(パーソナル・ナビゲーション・デバイス,簡易型カーナビ,ポータブルナビ)の市場に食い込もうとしています。

各社が中小型ディスプレイに注力するのは有機ELの強みがモバイル分野に生かせると考えているからですが,液晶も性能アップが進んでいます。
シャープはバックライト付きで厚さ0.89mmのパネルを開発済み。「液晶の薄型化はさらに進み有機ELには負けない」と一歩も引かない。

モバイル画面の制覇を目指した競争はたった今始まったばかりなのです。






(有機EL時代の到来か? その流れを追う(3) に続く)
29 Nov

有機EL(OLED)時代の到来か? その流れを追う (1)

[1] 市場開拓の尖兵
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「薄さ約3ミリのパネルに描き出される圧倒的な映像美」---目に映る色やカタチ、質感を、ありのままに再現すること。そのために、ソニーは、自ら発光する有機物質(organic material)をパネルに採用しました。
圧倒的なまでの高コントラスト、ピーク輝度、そして豊かな色再現性。自然界の美しさを、どこまでも忠実に描きだす「有機ELテレビ」XEL-1、誕生です。---と高らかに謳いあげソニーの有機ELテレビ(XEL?1)は世に産み落とされた
価格は20万円と,フルハイビジョン画質の37型液晶テレビが買える価格水準。それでも前評判は上々でネット販売では1時間ほどで予定数量を超えたとソニーの関係者は言っている。(ソニースタイル)

薄さに注目が集まるが基本性能も圧倒的でコントラスト比は百万対一,動画応答速度は数マイクロ秒と,数ミリ秒台の液晶やプラズマとは桁違いで鮮明な動画像をより滑らかに表示できていると報告されている。少し技術的に解説すると,独自の「Super Top Emission」という構造により高い開口率を実現。さらに、多重反射により各画素の有機膜層から出力光を効率よく取り出すマイクロキャビィティ構造の採用や、出力光をカラーフィルタで調節することで、自然な発色と、高い色純度を実現している。

ソニーは,このパネルを愛知県東浦町のST LCD(Sony Toyata LCD)で製造し,ソニーEMS(ソニーイーエムシーエス)稲沢テックでテレビに組み立てている。「既存設備の活用で投資は抑えた」ということもあり月産は2000台。それでもかなりの生産量と当方は思うが,この商品に力を入れるソニーの狙いはいかに?


有機物が電気で発光することは60年代から知られていた。だが、高い電圧でわずかに光る程度で、すぐにぼろぼろになった。柔らかくて壊れやすく、電子部品には不向きというイメージがつきまとってきた。

そんな状況を一変させたのが、米イーストマン・コダック社の研究員だったC・W・タン博士(現・米ロチェスター大教授)が87年に発表した論文だ。
タン博士は、有機物を真空蒸着で厚さ数百ナノメートル(ナノは10億分の1)のきわめて薄い膜にし、電気を通しやすい層と発光しやすい層を重ねる方式を発明。低い電圧でも明るく光らせることに成功した。

薄膜を均一に密着させるほど電気がショートしにくく、寿命がのびる。空気に触れないようしっかり封じればさらに長持ちする。層の数を増やして組み合わせを工夫したり、添加物を混ぜたり。いくらでも新しい化合物を合成できる有機物の強みもあって、研究が急加速した。

有機EL材料のトップメーカーである出光興産は85年、青色に光る有機物の研究を開始。89年には1時間だった寿命が97年には1万時間にのびた。現在は量産品が2万時間を超える。

出光は緑や赤の発光材料の開発にも成功し、今回のテレビ用の有機ELをソニーと共同開発に至った。細川地潮・電子材料開発センター所長は「消費電力ももっと下げられる。シンプル、薄型、省エネの究極のテレビになると思う」と話す。


よくわかる新有機ELディスプレイ
有機EL素子の開発と構成材料
有機ELディスプレイ



[2] ソニーの有機EL開発の歴史
 ソニーが有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレイの開発に着手したのは1998年と比較的新しい。そして2000年の春には約4インチのフルカラーパネルを開発。同年末には13インチの試作にも成功している。
しかしながら社内では次第にこの開発に対して風当たりが強くなってきていた。電気部門の不振で業績が悪化しているのにも関わらず金食い虫なのであった。開発資金につまりまずは携帯端末向けで実用化を目指すことになったのである。

「ここであきらめたら有機ELは永遠にテレビに出来ない」と当時開発の責任者だった占部哲夫ディスプレイデバイス開発本部長は,上司だった中鉢良治・現社長にこう訴え,大画面用の研究ラインの設置にこぎつけた。技術開発や技術革新を重ね今や「流れは有機ELに来ている」と有機ELの開花に迷いは無い。
 
とはいえ,量産技術は試行錯誤が続いている。今回の11型は携帯電話などに使われている低分子型。低温ポリシリコンTFT基板に材料をメタルマスク蒸着したもの。低分子型は技術は確立しているが設備面ではパネルの大型化が難しい。ソニーは新開発の基板に材料をレーザー転写することで低分子で大型化する技術を開発したとしているがそれでも「越えなければならないハードルが多い」と中鉢社長は正直に答えている。

ここでソニーの選択した技術が正しいのか検証するには,多くのスペースを必要とする。さらに一言で有機ELと言ってもまだ技術手法が統一される動きになっているわけではなく百家争鳴の状態なのである。
そのことをまず簡単に整理していく必要があると考えている。 
 
ただ阿社なりの結論をはじめに述べると「ソニーの技術方向性にはかなり懐疑的」と考えざるを得ないと思っている。
 ソニーは1998年から有機ELに着手と最初に書いた。これは本当にまだ十年にも満たないのである。ソニーが如何に深く要素技術および量産技術を見据えて開発を進めて行ったのかという点でかなり疑問に思えるのである。   

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