20111116sharp01存亡の危機に瀕しているシャープ。再建のカギを握る台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業からの出資問題は、結論が9月に持ち越されてしまった。そんな中、「国内メーカーから助け船がないのは、シャープのこれまでの奢った態度に問題があるからだ」(全国紙記者)という声も聞こえている。

 ある関係者は「シャープとは二度と取引したくない」と話す。設備を納めたが、シャープが全額負担すべき類の投資であるにもかかわらず、この取引者の別会社を利用し、費用を全額負担させたという。

 「売って終わりの設備ではなく、その設備が稼動し続ければうちは利益が出るので、足元を見られた。工場の減産で投資が回収できるか見えなくなった」と嘆く。

 シャープの取引業者泣かせは、有名だという。大阪・堺工場の巨額投資にあわせ、取引業者に複写機購入を迫ったこともあった。“ギブアンドテイク”はよくある話だが、通常は、現場が営業努力しながら、交渉する。シャープの場合、上から圧力をかけるばかり。

 「複写機は、いまは単体で売ることが少なく、ネットワークソリューションで売る製品。ユーザーがいま使用している機器や仕組みを把握し、更新時期に適切な提案するのが当たり前なのに、上からの圧力ばかりだったと聞いている」(ライバルメーカー)

 液晶パネルの売り先からの評判もよくなかった。パネル供給が不足していたとき、自社テレビ向けを優先し、外販分についてはたびたび納期遅れを起こしたが、悪びれもせず、「売ってやっている」という態度だったともいわれている。

 マスコミからも「性質の悪い企業」という声が聞こえる。
 「液晶パネル価格が急速に下落している状況を取材したいと何度も申し込んだが、なしのつぶて。『かわりに電子辞書の取材はどうですか?』と返されたときには笑ってしまった」(全国紙記者)という。

 昨年秋、パナソニックが兵庫・尼崎工場の一部休止を発表したときには、シャープの町田勝彦会長(現相談役)は、副会頭を務めている大阪商工会議所で、「うちは、常にコスト削減に努めているので大丈夫」と胸を張り、堂々とミスリードした。

 シャープの30代社員も、「あのときすでに大変な状況だったのに、危機意識を社員に伝えず問題を先送りした」と憤る。

 また、当時から、片山幹雄社長(現会長)と町田氏との仲の悪さも知られている。最近、住まいをシャープ本社近くから京都に移した町田氏は、記者の夜回りに対し、巨額赤字は自分の責任ではないという態度だという。「堺工場の巨額投資を決めたのは片山社長、といわんばかり」(テレビ局関係者)らしい。

 こうした中、4月に就任した奥田隆司社長は、火中の栗を拾った人である。
 当初は同情する向きが多かったが、新社長の評判もいまいち。就任直後、マスコミ各社にあいさつ回りに行った奥田社長は、「本社の社員がダメだから、こんなことになった」とまくし立てたというから驚く。

 「巨額を投じた堺工場の決断に自分は関与していなかった」という思いがあるのだろうが、その後の評判もよくない。8月上旬、切り売りする事業について経済紙が先行して書き始めたが、コメントを求めるために殺到した記者に対し、「あ、そ」と言ってまともに応えなかった。

 業績悪化とともに、悪い部分ばかりが言われるようになったシャープ。もっとも、技術力の高さについては、交渉中の鴻海も高く評価している。

 今回の危機を乗り越え、文化の悪さが是正できれば、よりよい企業に再生できるかもしれない。そのためにも、まずは生き残ることが課題になる。