シャープは電子機器受託製造サービス(EMS)で世界最大手の台湾メーカー「鴻海(ホンハイ)精密工業」が中国・成都に建設を計画する中小型液晶パネル工場に対し、同社独自の高精細パネル技術などを供与する方向で最終調整していることが、24日分かった。同社は3月に鴻海と資本業務提携することを発表しており、両社の共同事業の第1弾となる。なお、液晶パネルの堺工場(堺市)については同日、ソニーからの出資を解消すると発表した。

世界の企業から生産委託を受ける鴻海は、中国に巨大な工場群を持っており、四川省成都で液晶パネル工場の建設を計画。投資規模は千億円超とみられ、2013年の稼働を目指す。シャープは同工場に技術者を派遣し、高精細パネルや生産ラインの管理技術などを供与し、技術料として数百億円を受け取る見通し。

 また、両社は携帯電話事業でも提携することを検討。鴻海にスマートフォン(高機能携帯電話)の生産を委託し、中国で販売する方針だ。

 このほか、シャープは同日、堺工場で行ってきたソニーとの大型液晶パネルの共同事業を解消する一方で、堺工場の運営会社に対し、凸版印刷と大日本印刷から出資を受けることを発表した。ソニーが所有していた約7%の全株式は堺工場に約100億円で売却する。

 その結果、堺工場の持株比率は、シャープと鴻海の郭台銘董事長が各37・61%、凸版印刷と大日本印刷が各9・54%、自己株式が5・7%となる見込み。持ち株比率が40%を下回ることから堺工場はシャープ本体の連結対象から外れ、より自由度の高い運営が可能になる。

 鴻海の2011年12月期の売上高は前期比15%増の約9兆7千億円。米アップルのスマホ「iPhone」のほか、ソニーの液晶テレビなど世界各地から委託を受けている。シャープは、日本企業が得意とする技術面での供与の代わりに、鴻海のこうした世界ネットワークを生かし、世界市場にシャープの製品を売り込みたい構えだ。