パソコン(PC)世界最大手の米ヒューレット・パッカード(HP)が、同事業の分離検討を決めたことで台湾メーカーが戦々恐々としている。宏碁(エイサー)と華碩電脳(ASUS)が資金不足を理由に買収に難色を示す一方、潤沢な資金を持つ聯想(レノボ)かサムスン電子が買収先として有力視されている。サムスンによる買収は台湾メーカーにとって最悪のシナリオとされ、サプライヤーへの影響が懸念される。
HPは18日、PC事業の分離を検討すると発表した。分離の形態は未定だが、会社分割による別会社化や他社への売却などを検討しており、今後1~1年半の間に結論を出す予定だ。
市場ではかねてから同事業売却のうわさが流れ、サムスンによる買収観測も出ていた。HPの発表を受けて、宏碁と華碩が「資金が足りない」と買収を断念するなかで、サムスンと聯想が最有力視されている。特にサムスンは資金力で頭一つ抜けており、買収を足がかりに同事業でも世界ブランドに飛躍したいとの野望があるとされる。



しかしUBS証券は「サムスンによる買収こそが台湾メーカーにとって最悪のシナリオ」と分析。同社は生産体制の垂直統合を強化しているため、台湾のノートPC受託製造業者の受注量が激減するだけでなく、液晶パネルやDRAMなど部品の調達量も大幅に減らされる恐れがあるからだ。
一方で、聯想が買収した場合は台湾の受託製造業者との連動性が高いため、部品業者への影響は小さいとみている。
HPからのノートPC受注量が最も大きいのは広達電脳(クォンタ)だが、特に衝撃が大きいとされるのは同社への依存度が高い英業達(インベンテック)。ノートPCの大半をHPから受注している上、HPが打ち切りを発表したウェブOSを基盤としたタブレット端末「タッチパッド」も英業達が独占供給している。
ただ広達は、仮に売却が決まっても1~1年半後になるため、来年の受注には影響は出ないとしている。
タブレット端末人気に押され、PC時代の終焉(しゅうえん)とささやかれるなか、来年は薄型軽量のノートPC「ウルトラブック」の登場によりノートPC市場は再び盛り返すとの見方もある。
緯創資通(ウィストロン)の林憲銘董事長は「来年はウルトラブックと『ウィンドウズ8』がノートPC市場を救う」と断言。ただ今年は東日本大震災の後遺症で在庫が積み重なっているため、需要期は訪れず、第4四半期まで低迷が続くとみられている。