友達光電(AUO)が中国の同業、龍飛光電(江蘇省昆山市)に出資し、同社を通じて昆山に8.5世代工場を設置する投資案が22日、経済部投資審議委員会(投審会)の認可を得た。AUOの出資比率は49%で過半に達しないものの、龍飛の経営で主導権を握ることが決まっており、投審会はこのことが認可の決め手になったと説明した。23日付工商時報が報じた。
龍飛光電の持株比率はAUO49%(投資額7億9,600万米ドル)に対し昆山市政府が51%だが、彭双浪AUO執行副総経理によると、董事長、総経理、財務長の派遣を含めAUOが経営を主導し、将来的に出資比率の引き上げを行う可能性もある。なお経営陣の具体的な人事はまだ決まっていないと説明した。
AUOは8.5世代工場を台湾で2基稼働させており、昆山は3基目で、台湾企業による初の液晶パネル前工程の中国投資となる。生産開始は2013年の予定だが、パネル市場の動向を見て調整する方針だ。


8.5世代工場の投資には最低でも1,200億台湾元(約3,350億円)が必要とされるが、AUOは今回台湾元換算で約230億元で取得できるため、コストメリットが大きい。また、液晶パネル生産では、現在半製品を製造してから 中国に送付し、後工程モジュール(LCM)に組み立てているため、現地生産を行うことで中台間の輸送コスト、および中国側の関税を支払う必要がなくなる。
李焜耀AUO董事長は認可について、「真の意味での中国パネル業界の競争の舞台への参入、中国ディスプレイ産業において発言権を得たことを意味する」と手応えを語った。
同社は海爾集団(ハイアール)、TCL集団、四川長虹電器など中国大手テレビメーカーとの提携で各地にLCM工場を設置しており、「今後さらなる提携機会が期待できる」と期待感も示した。
なお今回の認可は、昨年3月に「投資額30億米ドルで昆山に7.5世代工場を設置」の当初案申請から16カ月の時間を要した。液晶パネルが台湾の重要産業で業界の競争も厳しい一方で、当局の手続きの遅さはたびたび批判の的になってきた。李董事長は、投資内容や投資額に関して何度も補足資料の提出や説明を求められ、そのたびにかなりの労力を必要としたとして、「政府は過度の干渉を行っている」と改めて不満をもらした。
なお、6月9日付香港商報電子版によると、中国では液晶パネル最大手の京東方科技集団(BOE)が北京に設置した初の8.5世代工場で5月下旬より試験生産を行っており、今月末にも本格的な稼働を予定している。また、深?華星光電も8.5世代工場で8月に試験生産、年末に量産を予定しているためAUOに先行メリットはない。