TFTLCDでは、TN、VA、IPSの3つの液晶モードが主に使用されており、アプリケーションに応じて使用される液晶モードも異なる。近年ではディスプレイの3D対応や新たなアプリケーションの台頭により、液晶モード需要にも変動が発生しており、同時に高性能化へ向けた開発も必要とされてきている。
注目が高まる3DTV向けの液晶材に特に必要とされているのが、高速応答化である。液晶材の高速応答化によって、3D表示で問題となるクロストーク(右目用と左目用の映像の混在表示)の軽減効果が期待されるため、各液晶材メーカーは液晶材の高速応答化対応に向けて開発を進めている。近年、採用が激減していたOCB液晶モードも高速応答を特長とすることから、3DTV用のメガネのレンズ部分に一部で採用が検討されている他、OCBを採用した3D用の小型ディスプレイの開発を進めているメーカーもある。
一方、携帯用の中小型ディスプレイで焦点となっているのが、広視野角化である。スマートフォンやタブレット端末の需要拡大に応じて、広視野角を特長とするFFS液晶モードの採用が拡大している。スマートフォンやタブレット端末の大手メーカーであるAppleがFFSを採用したことで、他のメーカーも追随する動きを見せている。
TFT-LCD向け液晶材市場はMerck、チッソ、DICの3社による寡占市場となるが、液晶モード別でシェアに大きく違いがある。こうした液晶材需要の変動を受けて、マーケットシェアにも動きがあり、メーカー間での開発競争も激化していくものと見られる。