IPSアルファテクノロジが必要としていた液晶パネルのサイズは32型と42型だったはず
である。第7.5世代(1950mm×2250mm)では42型が最適サイズ(8面取り)だが32型の効率
が悪く,第8世代では32型(18面取り)が最適だが42型の効率が悪い。最終的に第8世代を
選んだ理由は,「42型は当面,液晶ではなくPDPで攻める」ことを決めたため考えられる。

42型は現在,尼崎「P4」工場にて8面取りで生産されており,「P5」工場では16面取りと
なり,さらに効率は上がる。加えて,2008年からシングル・スキャン(片側駆動)を導入
し,液晶と同水準かそれ以下のコスト削減についてのメドが立ったため,42型をPDP主体
で展開することを決めた可能性が高い。逆に,42型PDPを続けないとP5までの生産能力を
埋めることが容易ではないため,42型が主流サイズとなる第7.5世代工場への投資を控え
たともいえるだろうう。

PDP側では,償却もほぼ終わった茨木の「P2」工場を収束させ,尼崎の「P3」,「P4」,
「P5」に生産を集中させることになるだろう。そして,P3では37型,58型,103型など,
比較的数が少ないサイズを生産し,P4では46型のフルHD(現在の42型からガラス・サイズ
の大型化で8面取りを継続),2009年5月に量産開始のP5では42型,50型フルHD(16面取り,
9面取り)を主体に生産する可能性が高いと見ている。

液晶パネルは茂原の第6世代工場で22型ワイド・パネル,26型,37型を,姫路の第8世代工
場で32型を中心に生産するだろう。第8世代工場は55型が6面取り,47型が8面取りと効率
が良く,市場需要や同社の戦略に応じて40型台,50型台も生産できるため,PDP需要が想
定ほど伸びなかった場合の保険にもなる。

問題は液晶テレビ市場で32型に次いで大きな市場となる可能性が高い40?42型の効率が悪
い点である。この場合,同社がIPSパネルにこだわるのであれば韓国LG Display Co.,Ltd.
から購買するしかない。もしくは,IPS技術を台湾・中国メーカーに新たにライセンス供
与して生産を託すことが必要となる。PDPで2位,3位の韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,
韓国LG Electronics Inc.は40?42型クラスを液晶パネル主体で展開しており,42型PDPに
再注力する可能性は低いため,松下電器はどうしても孤軍奮闘とならざるを得ず,数量・
価格面で不利な戦いを強いられるだろう。コスト競争力のある42型液晶パネルの確保は必
須と当社では考えており,同社がどのような手を打つか,注視している。