液晶パネル2位、友達光電(AUO)は31日、東芝モバイルディスプレイ(TMD)のシンガポール100%子会社で、低温ポリシリコンTFT(LTPS)専業メーカー、アドバンスト・フラット・パネル・ディスプレイ(AFPD)の全株式を買収することで覚書を結んだと発表した。LTPSの特許および量産技術の獲得により、今後、サムスン電子および新・奇美電子(チーメイ・イノルックス)に対抗して、スマートフォン向けハイエンドパネル市場の開拓が期待できる。買収額については日本経済新聞が「100億円」と報じたが、AUOは詳細な金額はまだ決まっておらず、4月末までに契約内容を決定し、その後7月までに買収作業を終えると説明した。

陳来助・AUO執行長(CEO)はAFPD買収の意義について、「超薄型ノートパソコンとスマートフォンのハイエンドパネル市場における戦略的地位の獲得に貢献する」と語った。AFPDは月産能力4万5,000枚のLTPS生産ラインを擁しており、AUOの既存の3.5世代生産ライン2本の生産能力は約2万枚のため、生産能力は一挙に3倍以上に拡大することになる。なお、外資系証券会社は、AUOは今回の買収を通じて今年、70億~90億台湾元(約206億~267億円)の売上増が見込めるとしている。





AUOは今後、ノキアやサムスン電子、宏達国際電子(HTC)向けにLTPSの供給が期待でき、液晶パネルメーカーとしてLTPSとアクティブマトリクス型有機EL(AMOLED)を擁するサムスン、および3社合併によりLTPS専業メーカーの統宝光電(トポリー・オプトエレクトロニクス) を組み込んだ新・奇美電と同分野で競争を繰り広げるものとみられる。液晶パネルの市場調査会社、ディスプレイサーチの謝勤益・大中華区副総裁は「LTPS技術は台湾パネルメーカーの中ではトポリーが最も高かったが、トポリーが奇美電に統合されたのでAUOも対抗措置を取る必要に迫られたのだろう。AUOの今後のハイエンド技術競争力はかなり期待できる」と合併の意義を評価した。なお、インターネットを利用するスマートフォンのディスプレイは高解像度が要求され、市場ではLTPSおよびLTPSを基板に製造するAMOLEDの需要が非常に強まっている。

業界関係者によると、特にAMOLEDは今後スマートフォンの標準パネルになると見込まれる。価格も通常の液晶パネルの3倍以上で高い粗利益率を持ち、この点もAUOにとって大きな魅力なようだ。クレディ・スイス証券のアナリスト、フェリックス・ルズリ氏は、AUOのAFPD買収の究極の目的は、LTPSを応用して次世代有機発光ダイオード(OLED)パネルを製造することにあるとみている。AUOは2007年にOLED開発を中断しているが、買収を通じて研究開発(R&D)を再開する考えとの分析だ。