韓国の放送業界に急に「3Dの風」が吹き始めた。ケーブルテレビ,衛星放送,そして地上波でのテレビ放送さえもが3次元(3D)映像番組の放映を試験的に開始する。
同国での3D放送一番乗りは,ケーブルテレビになりそうだ。韓国CJグループ傘下のケーブルテレビ統括会社「CJ HelloVision」は,早ければ2009年内にもケーブルテレビで3D放送を始める。ただし,当初は300世帯など限られた視聴者に向けたサービスになるという。
衛星放送でもまもなく始まる。2010年1月1日から24時間の3D専門チャンネルによる試験放送を開始するのが,韓国Korea Digital Satellite Broadcasting Co.,Ltd.(ブランド名SkyLife)である。試験電波は既に出している。同社は2009年12月,韓国LG Electronics,Co.,Ltd.と,3D放送および3D対応テレビに関する戦略的提携で合意したと発表した。具体的には,放送および受像機器の標準化,3Dコンテンツの制作,3D映画の海外からの調達,そして関連製品の販売などで協業する。3Dコンテンツの制作には3年間で300億ウォンを投資するという。
この発表に合わせてLG社は,3D対応テレビ製品について2010年に世界市場で40万台,2011年に340万台といった販売目標も発表した。ロンドン五輪がある2012年の市場規模は3000万台以上を見込む。韓国Displaybank社の調査でも,3D対応テレビの市場規模は2010年に世界で11億3600万米ドル,2011年に28億1600万米ドル,2012年に46億4400万米ドル,そして2015年には158億2900万米ドルに達すると発表している。
ただし,SkyLifeの当初の3D放送は,2時間の番組を繰り返し放送するものになる。2010年1月の目玉番組は,韓国ソウルで2009年12月に開催するスノーボード競技「Seoul Snow Jam 2009」など。映像制作には,米3ality,Inc.も参加する。
衛星放送での3D放送は,限定的ながら日本や英国で既に始まっている。一方,地上波での3D放送は,実施は当面困難という見方が支配的だった。韓国の放送および通信行政を統括するKCC(韓国放送通信委員会)は,この地上3D放送の試験放送を2010年後半に開始することを明らかにした。2010年1月にも事業者の選定手続きを開始するという。
地上波で放送する3D映像の解像度は1080i。左目用と右目用の映像に,異なる符号化方式を用いることで,3D映像に対応していない従来のテレビには2D映像として映るという。
KCCはこれまで,2012年のロンドン五輪に向けて3D放送を準備する計画だった。今回,これを約2年も前倒したことになる。