LCD用偏光板は、PVAフィルムにヨウ素を吸着・配向させることで偏光機能を持たせる。PVAフィルムをLCDセルに貼り合わせる際に使用される保護フィルムとしてはTACフィルムが主流であるが、2012年下期より保護フィルム用途にアクリルフィルムを採用した偏光板が登場する。

アクリルフィルム採用の背景には、偏光板の薄型化要求が挙げられる。アクリルフィルムはIPS用の0(ゼロ)位相差フィルムとして、40μm以下のフィルムが既に製品化されている。薄膜アクリルフィルムを保護フィルムにも採用することで、偏光板の薄型化に大きく寄与することが可能となる。

偏光板に使用するアクリルフィルムには、通常の光学用アクリル(PMMA)フィルムよりも薄膜でありながら、TACと同等の柔軟性を確保することが求められる。そのため、大手偏光板メーカーでは、数年前から偏光板用に適したアクリルフィルムの研究開発を行ってきた。すでに一部のメーカーは製膜・延伸などの製造技術を確立しており、2012年末からPVA保護用途でのアクリルフィルムの出荷を開始する予定である。




一方、競合するTACフィルムにおいても薄膜TACの開発が進められている。TACフィルムは既存の生産設備に最も適合しており、今後もTACフィルムがPVA保護用途の中心となって推移する見通しである。2015年のPVA保護用途でのアクリルフィルムの採用は、全体の10%に留まると予測されるが、偏光板要求の変化によってこの比率は上振れする可能性もあり、TACフィルムメーカーは予断を許さない状況となっている。

偏光板市場における新しい競争軸の一つである偏光板の薄型化において、アクリルフィルムがキーワードになるのは間違いないであろう。今後アクリルフィルム採用に関連した投資や製膜技術を保有する加工メーカーの参入が進むことで、偏光板市場の活性化が期待される。