「やはり売り上げは揺れる」──シャープの大西徹夫専務は先週、下期売上高が計画の1兆4000億円に達しないシナリオを検証していることを認めた。大型液晶は堺工場(大阪府堺市)を鴻海精密工業と共同運営し始めたことで稼働率が8割まで改善したものの、複数の関係者によると、中小型液晶が売り上げ計画の足を引っ張る可能性があるという。

シャープは再建シナリオの柱の1つとして、最新鋭の「IGZO(イグゾー)技術」を搭載した中小型液晶パネルの出荷拡大を見込んでいる。同パネルは亀山第2工場(三重県亀山市)で生産しているが、もともとテレビ用大型パネルの製造拠点を転換したため生産能力は過剰で、大西専務は同工場の稼働率が「かなり低い」ことを認めている。業界関係者によると、稼働率は2―3割にとどまるとの見方が出ている。



同工場はアップルのiPad(アイパッド)向けのパネルを生産しているとされるが、第8世代と呼ばるガラス基板は2160ミリメートル×2460ミリメートルの面積。ここから32型のテレビ用パネルが18枚とれるが、アイパッドの画面サイズは9.7型に過ぎない。

シャープ関係者によると、巨大な生産能力を埋めるため、大手メーカーの最新タブレット端末だけでなく、マイクロソフトの次期基本ソフト(OS)ウィンドウズ8を搭載した「ウルトラブック」向けのパネルの受注が必須の状況だ。しかし、同関係者によると、高精細で低消費電力のIGZOの性能を十分に発揮するには、ウィンドウズ8の安定化と画像を処理する半導体の開発を待たなければならず、シャープが想定していたよりも、その時期がずれ込んでいるという。

亀山第2工場の稼働を埋めるには当面「アップル頼み」の状態が続くことになる。だが、3月に発売された現行アイパッド向けのパネルは、サムスン電子、韓国のLGディスプレーに比べ、シャープは発売当初の出荷開始が遅れた。4―6月期の中小型液晶事業の業績悪化要因になったが、業界関係者によると、その後も出荷が伸びていない、との見方もある。また、ドイツ証券の中根康夫アナリストは「主要部品の動きから判断されるアイパッドの生産量は想定より少ない」とみており、アイパッドの販売そのものが思ったほど伸びていないとの見方を示している。

鴻海との出資条件の見直し協議は、シャープにとっては「シンボル的なもので早く片付けてしまいたい」(大西専務)というのが本音。そのため資本強化の面で合意を急いできたが、実際には協業を進展させたほうが再建への効果が高い。協業の検討対象になっているメキシコと中国の液晶テレビ組立工場の鴻海への売却は、約3000人の従業員の圧縮につながる。大西専務は「ここは是非ともやりたい」と話している。