シャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から出資が受けられない場合を想定した再建策を検討していることがわかった。難航している出資見直し交渉の長期化に備え、銀行からの融資を支えに、資金面では鴻海に頼らない経営再生のシナリオを描き始めた。

 当初、8月中にもまとまるとみられていた出資協議は合意に至らず、7日現在、シャープが目指す奥田隆司社長の訪台も実現していない。シャープの大西徹夫専務は同日、鴻海との出資見直し交渉が難航していることを認めたうえで、「様々なリスクシナリオを検討している」と述べ、鴻海から約670億円の出資が得られないことを前提にした再建計画も練っていることを明かした。



 シャープは、鴻海から株価の下落に見合った出資額の減額だけでなく、モバイル端末向けの中小型液晶パネルの生産に関与させるよう求められている。シャープはこの中小型液晶パネルを今後の収益の柱と見込んでいるだけに、技術流出への懸念を抱いており、関係者も「シャープとしても譲れない部分。交渉長期化もやむを得ない」と話す。

 一方、シャープの主力取引銀行の幹部は「鴻海との(出資見直し)交渉が再建の鍵を握っているわけではない。出資がなくともシャープが助かるようにしないといけない」と語り、シャープに対する資金面での支援を強める考えを示した。

 シャープは9月中にも、銀行団と協議した上で事業再建計画をまとめる。不採算に陥ったテレビや液晶部門を立て直すほか、自社ビルや海外テレビ工場の売却、希望退職などを実施。さらに、従業員の賞与カットなどで固定費を削減し、今年度下半期には連結の営業利益を約300億円の黒字にすることを目指している。

 ただ、鴻海との資本・業務提携は今後とも拡充する方針で、大西専務は「出資を得て、鴻海とは良好な関係を築き、強化していく方針に変わりはない」と話している。