液晶パネル大手、奇美電子(チーメイ・イノルックス)は6月29日の株主総会で、年内にタッチパネル月産能力を20万~22万枚(第4.5世代ガラス基板換算)へと、昨年より倍増させる計画を示した。スマートフォンやタブレット型パソコン市場を好感しており、さらにマイクロソフト(MS)の次期OS(基本ソフト)、ウィンドウズ8(Windows 8)発売で需要が増えるとの見方だ。昨年644億台湾元(約1,720億円)以上の損失を出した同社は、核心のパネル関連業務に集中することで赤字脱却を図る。2日付電子時報などが報じた。

楊弘文・奇美電協理によると、新竹科学工業園区(竹科)竹南園区の第4.5世代工場をタッチパネル生産に全面切り替え、第5世代工場も月産2万~3万枚をタッチパネル生産に振り分ける。南部科学工業園区(南科)では第4.5世代のタッチパネル工場2基を新設し、相次いで稼働させる。これにより、タッチパネル生産能力を昨年の10万枚より倍増させる。このほか、オンセル型のタッチセンサー内蔵液晶パネル「TOD(タッチ・オン・ディスプレイ)」を早ければ下半期に量産する。一方、インセル型は来年量産する計画だ。

満足できる稼働率

 奇美電によると、タッチパネルは、携帯電話市場で浸透率4割が予想されるスマートフォン向けなどのほか、超薄型軽量ノートPC向けも期待できる。白色有機EL(WOLED)パネルを下半期に量産する計画もある。液晶テレビ向けの大型パネルはスリムベゼル(狭額縁)、発光ダイオード(LED)バックライトなどの技術や、29、39、50、58インチなど既存以外のサイズで差別化を図る戦略だ。

 売上高の構成は大型パネル70%、中小型パネル15~18%とし、第1四半期に手を引いた組み立てなど、パネル関連以外の事業を縮小する方針だ。

 段行建董事長兼執行長は、現在の稼働率は満足できる水準で、経済環境に大きな変動がない限り、下半期は昨年より良くなると強調した。

鴻海が全力支援表明

 奇美電は同日の董事会で董事2席、監察人2席を改選し、奇美実業の法人董事が経営から退いた。段董事長は、鴻海科技集団(フォックスコン)の郭台銘董事長が、自身との協議の際、鴻海が奇美電を全力で支えると表明したと説明した。一方で、今後も両社のサポートが必要なほか、韓国や中国、日本のパネルメーカーが政府の支援を受けていることを引き合いに出し、台湾政府に産業支援を呼び掛ける考えを示した。