IKEAは6月から欧州市場でテレビを販売する。テレビの売り込みポイントはもはやディスプレイそのものにはないと確信する同社は、店舗やデザイン、便利さで差別化を図ろうとしている。これはApple社の戦略と同じだ。
IKEAは、例えば大学の寮の部屋に家具が必要なときに向かうところだし、読者の家の多くにも、例えば家電をしまう場所として、キャビネットや本棚など、IKEA定番の家具があることだろう。そして今夏からIKEA社は、Samsung社やソニーなどと直接的に競合する家電メーカーになる計画だ。

 4月中旬に『Uppleva』が発表されたときは、驚きと揶揄の対象だった。「IKEAのテレビだって? 誰が買うんだ?」というのが、ハードコアなガジェット・ファンたちの声だった。しかし、6月1日にIKEA社は新製品の動画を公開し、その詳細が判明してきた。





 UpplevaはWi-Fiに対応したスマートテレビだ。USBやHDMIなど周辺機器の接続に必要な標準的ポート類を備えており、LEDバックライトのディスプレイは、解像度1080pのフルHD対応、レスポンス・タイムは400Hzだ。しかも、これはただのテレビではない。本格的なメディアセンターの中核となるべく、Blu-ray/DVD/CDプレイヤーが組み込まれているうえ、2.1チャンネルのサラウンド・サウンド・システム、さらにケーブルの束やたくさんのBlu-rayコレクションをきちんと収納できるスペースも備えている。実際、Upplevaの最大の魅力のひとつは、配線やケーブルが視界にまったく入らないという点だ。

 「TVとオーディオと家具がユニークな形で統合された、コンプリートなTVソリューションを市場に提供するつもりだ」と、Upplevaプロジェクト責任者のマーセル・ゴドフロイは製品動画のなかで説明している。
Upplevaは今月から、一部のヨーロッパ市場で1,000ドル以下で販売されるという。

 IKEA社は、テレビの売り込みポイントはもはやディスプレイそのものにはないと確信している。一部の超高性能なハイエンドTVを除けば、テレビの画質性能に大きな差は無い。Upplevaの価格帯では、流通(販売されている店)、便利さ、見た目で差別化が図られている。

 「Upplevaは特に技術的なブレークスルーが見られない製品だが、それでもIKEA社は市場参入の可能性を見ている。この事実自体が、テレビ技術について重要なポイントを語っている」と、IHS iSuppli社のアナリスト、ジョーダン・セルバーンは語る。

 それこそまさに、Apple社がテレビ市場に見いだし、その領域で大きな衝撃を与える方法を模索している点でもある。ただし、発売が噂されるAppleブランドのテレビ(日本語版記事)が間違いなくハイエンド市場向けなのに対し、IKEA社の製品は、より低価格市場をターゲットにすることになる。

 そういえば、IKEAのテレビは購入者が自分で組み立てるものだろうか。その点は誰もが知りたいところだろう。「IKEAが売るものなのだから、六角レンチが梱包されていないとは考えられない」とセルバーン氏は予測している。