写真ソニーとパナソニックが有機ELテレビ事業で提携交渉に入ったことがわかった。両社の幹部が複数回の交渉を持ち、量産技術を共同開発する可能性を検討している。
複数の関係筋が15日に明らかにした。

関係筋2人によると、有機ELパネルの量産に向けた材料開発を軸に提携の可能性を探っているが、交渉には流動的な要素が多い。ただ、実現すれば日本メーカー大手が手を組み、先行する韓国勢に対抗する構図になる。韓国のサムスン電子と同LG電子は年内に55型の有機ELテレビを発売する。ソニーとパナソニックともに韓国勢に後れをとった危機感が強い。

ソニーは2007年に世界初の有機ELテレビ(11型)を発売したが高価で人気が出なかったため、すでに生産を中止した。現在の有機ELテレビ事業としては、医療や放送業界向けに業務用の25型モニターを発売しているが、コンシューマ市場への再参入は悲願。ソニーの平井一夫社長は4月12日の経営方針説明会で、有機ELテレビ事業について「他社との協業を視野に入れている」と述べていた。

有機ELパネルの量産は液晶パネル工場を転用するのが効率的だが、ソニーは液晶工場を持っていない。このため、台湾の液晶パネル大手、友達光電(AUオプトロニクス)と有機ELパネルの量産に向けた技術開発を進めていることが明らかになっている。関係筋1人によると、この協業交渉にパナソニックが合流する可能性もあるという。

一方で、パナソニックは年内にも約300億円を投資して、液晶パネルを製造している姫路工場(兵庫県姫路市)に有機ELパネルの量産試作ラインを作る計画。パナソニックは液晶への巨額投資の「反省」から、有機ELパネル工場への大規模投資には否定的な考えで、大坪文雄社長は11日の事業方針説明会で「有機ELパネルを事業化するにしても、自前ですべて設備投資する可能性は低い。ベストパートナーと組んで投資リスクを減らしていくのが大切」と述べていた。

パナソニックのAV機器部門副社長の伊藤好生役員(ディスプレイデバイス担当)は15日午後、大阪府内で記者団に対し「(有機ELの)パネルやテレビについて色々な可能性を検討するのは事実だが、どの会社とどのような協業を検討しているかは発表できるものはない」と話した。