東芝、日立製作所、ソニーと官民ファンドの産業革新機構は31日、中小型液晶パネル事業の統合新会社を年内に設立すると発表する。高機能携帯電話(スマートフォン)などに使う液晶パネル市場で唯一、シェアが20%を超える世界最大手の企業が誕生する。最先端の技術を3社が持ち寄り、革新機構の資金を活用して生産能力を増強する計画だ。韓国や台湾勢に競り負けてきた液晶パネル分野で巻き返せるか。



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米ディスプレイサーチによると2010年の中小型液晶市場ではシャープが14.8%。3社連合のシェアは単純合計で21.5%と、シャープを抜いて1位となる。

 スマートフォンや米アップルのタブレット端末「iPad(アイパッド)」などに搭載する中小型パネルの需要増に応えるには、1000億円規模の新工場が不可欠だ。ただいったん供給が過剰になると、価格が急落するのもパネルビジネスの宿命。日立と東芝、ソニーの3社は高精細パネルなど技術に優位性があるうちに、事業基盤を拡大することが必要との認識で一致した。

 3社が革新機構と統合交渉を本格化したのは6月末。3社統合の成果が問われる新工場を、どこに建設するかをめぐって調整が続けられた。

 日立は千葉県茂原市にあるパナソニックのテレビ向け大型液晶パネル工場を買収し、中小型パネル向けラインに転用する案を主張している。同工場は日立ディスプレイズに隣接しており、日立の技術を移転しやすい。新工場を更地から建設するより短期間で量産体制を築けるのが利点だ。(パナソニックは別に姫路工場も保有)

 だが、東芝は既存工場を使っても製造装置の入れ替えが必要なほか、老朽設備の廃棄費用などを考えると、新工場を建設するよりコスト高になる可能性もあるとみる。

 新工場の立地を巡る調整が難航しているのは、統合交渉の組み合わせが何度も変わったことが背景にある。昨秋から今春にかけて日立は電子機器の受託生産で世界最大手の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に、液晶パネル事業を事実上、譲渡する交渉を重ねた。その際、能力増強策としてパナソニックの工場活用を検討したのが始まりだ

 一方、東芝とソニーは革新機構の出資を得て2社の事業統合を模索。両社の拠点がある石川県や愛知県に新工場を設けることを検討していた。6月末に日立が鴻海との交渉を打ち切り、東芝―ソニー連合の協議に合流したため、それぞれの思惑がぶつかる形となった。

 革新機構は新会社に約2000億円を出資する。立地の決定権は新会社に7割を出資する革新機構にあり、「徹底的に経済合理性で判断する」(機構幹部)と強調する。中小型液晶で勝ち残るには、世界規模の特需を誰よりも速く囲い込むスピードが必要。新工場を迅速に決定できるか、統合新会社の競争力を占う試金石となりそうだ。