テレビは8期連続で赤字確定――。7月28日、2011年4~6月期決算を発表したソニーは、早々に事業の見直しを迫られた。

 12年3月期は赤字半減を見込んでいたが、前期並み(750億円)か、さらに膨らむ見通し。販売計画も2700万台(前期2240万台)から500万台引き下げた。

 最大の誤算が欧米市場だ。特に北米は泥沼の価格競争に陥っている。需要が細る中、ウォルマート・ストアーズが競合メーカーであるVIZIOの低価格品を拡充。ソニーの売り場は縮小し、価格で対抗したが、赤字は膨らんだ。

 そこで「欧米市場では数を追わず、構造改革に踏み込む」(加藤優CFO)と方針転換。日米欧の販売部門のリストラに着手する。


決算と同日、テレビ事業のトップ交代も発表した。石田佳久ホームエンタテインメント事業本部長(写真)は、携帯電話の合弁会社、英ソニー・エリクソンの副社長へ出向する。

 石田氏はハワード・ストリンガー会長兼社長が次世代のリーダーと期待した「四銃士」の一人。昨秋、米グーグルのテレビ向けプラットフォームを採用した世界初の「Google TV」を北米で発売したが、ヒットに結び付けられなかった。

 後任には稼ぎ頭のデジタルカメラを統括し、ミラーレス一眼「NEX」をヒットに導いた今村昌志パーソナルイメージング&サウンド事業本部長が就任。「石田は結果として利益を出せなかった。今後は商品作りが得意な今村が取り組む」(加藤CFO)。

 今回の人事は、平井一夫副社長の意向も働いている。次期社長候補と目される平井副社長は、4月からテレビを含む一般消費者向け製品すべてを統括している。8月中に改革案を発表する方針で、「地域によっては販社の統合を考える。一方で、新興国の人員は今まで以上に増やしていく」という。

だが、黒字化のハードルは年々上がっている。新興国では、需要が爆発するといわれる“マジックプライス”が32型で199ドルともいわれ、価格下落が続く。ディスプレイサーチの鳥居寿一バイスプレジデントは「先進国と新興国とで、開発・販売体制を明確に分けないと、利益を出すのは難しい」と指摘する。

 テレビ市場は、金額ベースで12年をピークに縮小が予想される。「テレビ事業から撤退はありえない」(平井副社長)と断言するが、成長戦略を描けなければ赤字体質は変わらない。過去7期にわたるソニーのテレビ事業の赤字は合計で5000億円に上る。厳しい事業環境の中、平井改革の手腕が試される。