パナソニックエレクトロニックデバイス(PED)はスマートフォンなど高機能端末の需要が急拡大しているのに対応し、同端末向けの樹脂多層基板「ALIVH(アリブ)」の台湾での生産能力を年内に4倍に高める。桃園県に新工場を設立するほか、新北市にある既存工場の設備も拡充する。
PEDは16日、新工場を桃園県大園郷の大園工業区に設立すると発表した。10月から生産を始める予定。月産能力は300万台(携帯電話台数換算、以下同)。PEDによると、投資額は100億円規模に上る。敷地面積は約1万8,000平方メートルで、従業員は約300人。
同時に、パナソニック台湾が持つ新北市中和区の既存工場の設備を増強する。投資額は明らかにしていない。同工場は2005年から稼働しており、現在の月産能力は150万台。7月までに2倍の300万台に増やす計画だ。これにより桃園の新工場と合わせた月産能力は、年内に現在の約4倍に当たる600万台まで増える見込み。
アリブはパナソニックが開発した樹脂多層基板。高密度・高多層化に強みを持っている。1996年に事業化し、松下電器産業(現パナソニック)の携帯電話に搭載した。スマートフォンのほかにはデジタルカメラなどにも使用されている。今年3月末時点の全世界での累計出荷量は4億台に達している。
日本国内では97年にプリント基板大手の日本シイエムケイ(東京都新宿区)へ技術供与をし、2社供給体制を敷いている。PEDが月850万台、シイエムケイは同約5,000~6,000平方メートルを生産する。PEDの海外の生産拠点は台湾だけ。台湾生産分は主に海外のスマートフォンメーカー向けに出荷する。
拡大するスマートフォン需要を受け、PEDは海外でのアリブの生産拡充を急いでいる。2月には回路基板の欧州最大手、AT&S(オーストリア)と技術供与契約を結んだ。PEDによると、AT&Sはまだ生産を始めていない。PEDは「今後も海外で新たな生産拠点の設置を探る」としている。