シャープが主力の液晶ビジネスで、“お家芸”の大型パネルの不振にあえでいる。販売不振や東日本大震災に伴う部材の調達難により、主力の亀山工場(三重県亀山市)と堺工場(堺市)の2カ所で4月から生産休止を余儀なくされるなど、急激に採算が悪化。好調な中小型パネルへのシフトに活路を見いだすシナリオだが、先行きは見通せない。

 「4~6月期決算はパネルの生産停止で、厳しい業績になる」。4月27日、大阪市内で決算会見にのぞんだ片山幹雄社長は苦しい経営環境をこう説明した。

 シャープは震災の影響が見きわめられないとして、平成24年3月期の業績予想の公表を見送ったが、足下の環境は厳しさを増す。その原因は、これまで業績を牽引(けんいん)してきた大型液晶パネルの不振だ。

 韓国や台湾勢などとの価格競争が激化したことや生産調整で大型液晶パネルの採算が悪化。このため、23年3月期の液晶事業の営業利益は約7%減少した。

 採算悪化に拍車をかけたのが、亀山と堺工場の全面的な生産停止だ。両工場はリーマン・ショック後も操業を続けたシャープの“顔”。しかし、販売不振などで在庫が積み上がり、ついに4月初旬に生産停止に追い込まれた。


片山社長は「5月の大型連休明けからの再開を目指す」と説明するが、市場関係者の間では「状況次第では生産調整が長引く」(証券アナリスト)との見方も多い。

 大型設備の稼働率の低下は業績に直撃する。これを避けるためシャープは、大型液晶パネルを生産している亀山第2工場(三重県亀山市)の一部ラインを改造し、需要が世界的に拡大するスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型端末向けの中小型液晶パネルを年内にも生産する方針だ。また、北米や中国市場で大型液晶テレビを強化し稼働率改善を狙う。

だが、状況は好転の兆しをみせない。円高で韓国や台湾などライバルメーカーの価格競争力が相対的に高まっており、大型パネルの外販には逆風となっている。

 さらに誤算だったのが大型液晶パネルを生産する共同出資会社にソニーが追加出資を見送ったことだ。当初は現在約7%の出資比率を4月末までに34%に引き上げる計画だった。

 しかし、パネル市場の低迷などから交渉期限を1年延長し、再検討することを決めた。追加出資に向け協議は続けられるものの、最悪の場合、ソニーが追加出資を断念する可能性もある。追加出資にあわせ、ソニーはパネルの調達量を増やす予定だっただけに、仮に追加出資が実現しなければ、シャープはソニーという大口顧客を失うことになる。

 さらに、液晶事業の失速で影を落としているのが中国での新工場建設計画だ。日本は家電エコポイントの反動や今年7月のアナログ停波以降、液晶テレビの需要縮小が見込まれる。

 一方、中国では需要の拡大が続いており、シャープは現在、中国の南京に大型液晶パネルの工場を建設する方向で検討を進めている。

 しかし、国内主力工場の稼働率が上がらない中、新工場の建設は負担が重い。それでも中国市場で出遅れれば新たな成長の足場を失いかねないだけに、シャープは厳しい選択を迫られている。