鴻海科技集団(フォックスコン)がグループ分割を検討しているもようだ。週刊誌「壱週刊」(最新460号)は、鴻海が今後事業ごとに3~4の子集団に分け、経営の中心部も台湾と上海の2カ所体制に移行する方針との見通しを伝えた。

 壱週刊によると、郭董事長は3年前、適当な後継者が見つからなかった場合、鴻海を数グループに分け、それぞれ成長させればよい」と発言したことがある。その際は分割の時期として「グループの売上高が1,000億米ドルを超えた時」を挙げていた。
そして先週、傘下の群創光電(イノルックス・ディスプレイ)が旧奇美電子(CMO)などを合併し、新・奇美電(チーメイ・イノルックス)が誕生したことで、鴻海グループの売上高はまさに1,000億米ドルを突破する段階を迎えている。
現在、9つの事業群に加え、医療、省エネルギーといった新興事業を抱える鴻海は、これを統合・分割し、その後台湾または海外市場で上場させることを計画しているもようだ。 壱週刊の調査によると、まず▽筐体とコネクタ部門に無人工場、ソフトウエア開発などを加えたグループ▽中国3C(コンピューター、通信、家電)販売・電子製品の受託生産など中国市場を中心とするグループ▽液晶テレビ組み立て受託、発光ダイオード(LED)など光電、ディスプレイ関連のグループ──の3グループに統合し、その後さらに、グリーンエネルギー、医療、バイテクなど新興分野を含む第4のグループを追加する可能性もあるとみられる。

 郭董事長は、新・奇美電発足を受けて、群創が保有していたディスプレイ製品の組み立て業務と、鴻海が持つ液晶テレビ関連業務を統合し、独立した事業群として切り離すことも検討しているもようだ。
旧・奇美電の最大顧客だった液晶モニター受託生産世界最大手の冠捷科技(TPVテクノロジー)は、最大のライバル、群創が旧・奇美電との合併を決定したことを受けて、旧・奇美電との提携を停止した。新・奇美電成立によって、利益衝突を懸念する顧客が発注を引き揚げるケースは今後も発生するとみられる。このため新・奇美電は今後、純粋な液晶パネルメーカーとする可能性が高い。
 
鴻海グループ分割計画のもう一つの重点は、「中国市場に近づく」という視点だ。
郭董事長は、中国での3C販売や受託生産の業務比率が日増しに拡大する状況を見て、現地での管理をより効率化、強化するため、台湾に設置している総本部(台北県土城工業区)に加え、上海にも経営センターを備える考えだと壱週刊は指摘する。

同誌によると、鴻海は3年前に上海浦東新区陸家嘴エリアのオフィスビル用地に1万平方メートルの土地を取得しており、昨年開発計画が始動したという。こうした観測について鴻海の丁祈安・広報担当は、「企業総本部を台湾におくことに変更はない。上海の経営センターについては、コメントするには時期尚早だ」と語った。