鴻海科技集団(フォックスコン)傘下の液晶パネルメーカー、群創光電(イノルックス・ディスプレー)は14日、奇美電子(CMO)を株式交換を通じて合併すると発表した。群創が存続会社となるが、会社名は「奇美電子(英文名・Chimei Innolux)」の名前を残す。ディスプレイサーチによると合併後の世界パネル市場でのシェアは18%となり、友達光電(AUO)の16%を抜いて台湾首位、世界でもサムスン電子(24%)、LGディスプレイ(21%)に次いで3位となる。台湾パネル業界で過去最大の合併で、サプライチェーンに大きな影響を与えるとみられる。15日付工商時報などが報じた。
株式交換は奇美電2.05株に対し群創1株の比率で行い、奇美電に21.95%のプレミアムが付く。群創の13日の株価終値47台湾元から計算すると買収総額は約2,000億元(約5,570億円)。合併基準日は来年5月1日となる。

合併後の新奇美電の資本金は約720億元で、同日付経済日報によると、奇美集団の創業者許文龍氏および同グループの持ち株比率が約20%、郭台銘董事長および鴻海集団の持ち株比率が約15%となる。

新会社の経営陣は、廖錦祥・現奇美電董事長が董事長に、また、段行建・現群創董事長が総経理兼執行長(CEO)に就任する。

高い相互補完性

各種製品に展開し完成されたサプライチェーンを持つ鴻海集団による奇美電の買収は、外資系証券会社から相互補完性が高いと評価されている。群創はパネルモジュールやパネル半製品の大型から小型までの各種生産ラインを保有することになり、川上、川下とも大きな規模を持つ「新奇美モデル」が形成されると指摘されている。

新奇美の誕生により、鴻海集団はまず液晶テレビ事業で恩恵を受ける見通しだ。

ソニーの液晶テレビを受託する鴻海精密工業の来年の目標出荷台数は400万台。サムスン、LGエレクトロニクス、ビジオなどから32インチ以下の機種を受注している群創は、合併に伴う技術と生産能力掌握により韓国メーカーから40インチ以上の機種を受注するとみられ、出荷目標700万台に引き上げると予想される。この通りとなればグループ全体の目標出荷台数は1,100万台となる。
奇美電は、AUOも合併を狙って接触していた。同社広報は14日「(奇美電が鴻海を選んだため)当社が世界一になる機会を失ったことは非常に残念だ」とコメントを発表した。

李焜耀同社董事長は同日、「合併がパネル産業の世界地図を塗り替えるか、まだ論評するのは早過ぎる。今後多くの変数があり詳しく見ていきたい」と語った。

郭台銘鴻海董事長は14日の記者会見で、まず台湾首位のAUOに挑戦する考えを語っている。

なお、15日付蘋果日報は、中堅パネルメーカーの中華映管(CPT)と瀚宇彩晶(ハンスター)について、「携帯電話など中小型パネル以外の選択肢はなく、後ろ盾となる資本を欠いており、今後の生存は容易でない」と指摘した。

今回の合併は、土曜日の午前9時半という異例の時間に発表された。これは先週12日、奇美電の株価がストップ高となり、翌13日も大量の売買が行われるなど異常な動きがあったため、インサイダー取引の疑いにより合併が中止に追い込まれる事態を回避するためだという。

[許文龍氏は金融危機に見舞われた昨年12月の段階で、自社が合併対象となることを視野に業界再編を呼び掛けていた。記者会見では次々と事業版図を拡大する郭台銘董事長を「現代のジンギスカン」と称賛した]