鴻海精密工業グループの中小型液晶パネルメーカー、群創光電(イノラックス)が液晶パネル台湾2位の奇美電子(CMO)を吸収合併する。両社が14日発表した。取引額は2,000億台湾元規模となり、台湾エレクトロニクス業界で史上最大の合併となる。両社の合併により、台湾最大、世界でも韓国勢2社に肩を並べるパネルメーカーが誕生し、業界地図が大きく塗り変わりそうだ。

合併は株式交換を通じて行い、群創1株に対し、奇美電子2.05株を割り当てる。群創を存続会社とするが、新会社名は「奇美電子」を残す。英語名は「Chimei Innolux」。合併は来年5月1日付の見通し。13日の終値で計算した場合、取引額は2,000億元近くとなり、台湾エレクトロニクス業界で史上最大の合併となる。

鴻海の郭台銘董事長は「新奇美」は「台湾液晶パネル業界で首位になる」と断言。「3年以内に世界上位3位入りし、韓国のサムスン電子やLGディスプレー(LGD)と肩を並べる」と胸を張った。

奇美グループの創業者である許文龍氏は「人生最大の選択となった」と苦渋の決断だったことを明かした。同社に対しては群創のほかにも、友達光電(AUO)やサムスン電子などが合併を持ちかけていた。しかし最終的にはスケールメリットよりも相互補完性を優先したという。

「新奇美」の誕生により、群創と奇美を合わせた世界シェア(面積ベース)は17%となり、友達の16%を抜いて台湾最大手に浮上する見通し。世界ではサムスンとLGDの上位2社を追う構図となり、液晶パネルの業界地図が大きく塗り変わることになる。

両社の合併で、「1+1は5」の相乗効果が発揮できると郭董事長は期待感を示す。

液晶パネルの前工程を得意とする奇美に対し、群創は後工程とサプライチェーンを完備。両社はパネルの半製品やモジュールといった液晶パネルの生産ラインだけでなく、部品や技術の調達などでも優位性を確保できることになる。

一方の友達は、「千載一遇のチャンスを逃し遺憾だ」としながらも、李焜耀董事長は「冷静になって、当社や産業全体への影響を分析する」と話した。

準大手の中華映管(CPT)と瀚宇彩晶(ハンスター)は「積極的に今後の計画を立てる」「合併後の効果については、経営者の戦略を見る必要がある」などと冷静な反応を見せた。

ただ3社は今後、新奇美にどう立ち向かうかという難題を突きつけられた。かつて台湾の液晶パネル業界では、達碁科技(エイサー・ディスプレイ)と聯友光電(ユニパック)の合併による友達誕生、友達による広輝電子(クォンタ・ディスプレー)合併などの業界再編を経ており、今回の合併で再び再編の流れが加速することも予測される。

鴻海は早くも次の合併先を奇美グループでバックライトモジュールなどを手がける奇菱科技(CHILIN)に定めた。奇美もこれに合意しており、合併は時間の問題とみられる。

鴻海は過去2年間に米サンミナSCIの一部資産買収、ソニーのメキシコ工場買収、群創による統宝光電(トポリー)合併など買収攻勢を強めており、快進撃はまだまだ続きそうだ。15日付台湾各紙が伝えた。