有機EL(from LCD to OLED)時代の到来か? その流れを追う (6)より続く

「われわれの新しい材料を使った有機ELテレビです」。先月11月27日都内の定例記者会見の席上,住友化学の米倉弘昌社長はカシオ計算機が作った6インチのフルカラーテレビの試作機を一台展示して自慢したそうですね。
パネルの厚さはわずか2mm弱。超薄型の有機ELテレビはソニーが11インチを商品化して店頭に並べていますが,この試作機に確かに世界の有機EL関係者が注目しています。
厚さなどではなく,「高分子」タイプという次世代の有機EL材料を使っているところに注目が集まっているのです。
現在普及している有機ELの材料は,分子量が数千未満の「低分子」タイプです。分子量が少ない分,純度を高めて品質が安定しやすいのが特徴なのですが,低分子材料でパネルなどを製造する場合,真空中で材料を加熱・気化して基板上に成膜する真空蒸着が基本で,大画面に均一に蒸着するのが難しくパネルの大型化に限界があると考えられているのです。発光層や輸送層などを積層するのに手間もかかります。
つまり現在の小型中心のパネルにはそれなりの価格で製造できるとしても,大型を見据えた場合加速度的に技術難度や低価格化のハードルが上がってしまうのですね。

 一方分子量が一万を越す「高分子」は,一つの材料に発光や輸送などの複数の機能を盛り込んで一層にもできるのです。
さらに材料を溶剤に溶かしてインクジェットで基板に塗布することも可能。(但しインクジェットが本当に安上がりかどうかはまだ液晶でも議論がありますが..凸版印刷がリソグラフィ法でシャープ10G対応
もし安定的な工程が確立できたならば大画面に効率よく塗布できます。テレビの大型化や液晶などに比べて割高な製造コストの低減には高分子が有望とされる理由がここにあります。


(7へ続く